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高血圧は「病気」ではないのに、薬で下げようとする日本の医者。短所を治すより、長所を伸ばすほうが効率は良い(引用記事)


40歳~60歳あたりに訪れる、大人から老人へと移り変わっていく期間を
「思秋期」と表現するのは、和田秀樹先生。
高齢者を専門とする精神科医を務めてきた和田先生いわく、
「思秋期は人生にとって大切な年代であると同時に、
年齢を重ねても充実した人生を送れるかが決まる時期」とのこと。
たとえば、年齢を重ねるにつれて血圧が高くなりますが、
それ自体が即座に病気というわけではないとのことで――。

【日本の医者はリフォーム詐欺師】


メタボ指標の血圧や血糖値に関して、
通説がいかに当てにならないかということを裏付けるデータがある。

まずは、血圧について紹介しよう。
血圧の正常値は、最高血圧が130mmHg、最低血圧が85mmHg未満とされ、
これを超えるとメタボ指標に引っかかってしまう。
高血圧と診断されるのは、上が140、下が90以上となる。

しかし、この範囲内に収まる人の割合は、
年を重ねるごとにどんどん減っていくものだ。

厚生労働省の「令和元年国民健康・栄養調査」によると、
高血圧とされる人が50パーセントを超えるのは、
男性では50代(52.3パーセント)以上、女性では60代(50.1パーセント)となっている。
40歳代を見ても、男性は約4割、女性は約3割の人が高血圧なのである。

さらに70歳以上になると、男女ともに約70パーセントもの人が高血圧と診断されてしまい、
これでは正常値であるほうがかえって異常ともいえてしまうのだ。

数年前、あるテレビ番組でイタリアの医師が
独居高齢者の自宅に巡回診療をしている場面を放映していた。
そのとき、血圧を測った医師が言った言葉は、
「150ですね。はい、健康です」というものだった。

ところが、日本の医者はそうは言わない。
「血圧が150もありますね。こんなに高いと脳卒中になりかねないので、
薬を出しておきましょう」となってしまう。

【血圧の高さが、即座に病気というわけではない】


もともと、年をとれば血圧が多少高くなるのは当然のこと。
60代や70代になれば、血圧が150や160あるのが普通で、
昔からそうやってみんな生きてきた。

しかし、若者も老人も一緒くたにして血圧の正常値を決めているため、
日本ではある程度の年齢になれば、みんな高血圧だということになってしまう。

もちろん、血圧があまりに高すぎれば、脳卒中など循環器系の病気のリスクは高まるが、
「血圧が高い」ということそれ自体が、即座に病気というわけではないのだ。

それなのに、日本では正常とされる数値を少しでも超えると、
すぐに薬で値を下げようとする。まだ病気にかかったわけでもないのに、
患者を薬漬けにしてしまうのである。

たとえると、家の土台がまだ悪くなっていないのに、
将来雨漏りするとか、白アリの温床になるなどとリスクをことさら強調して、
無理にリフォームをさせるのと同じことだ。
私が日本の医者のことを「リフォーム詐欺師」と呼ぶゆえんである。

●血圧が高いことそれ自体は病気ではない

【血圧の適正範囲とは?】

かつては日本でも、適正血圧は「年齢プラス90」と言われていた。

50歳なら「140」、60歳なら「150」、
70歳なら「160」ということで、現在の基準からするとかなり高い。

また、治療の現場でも、「高齢者の血圧は多少高くてもかまわない」と考えられてきた。

しかし、日本高血圧学会は2000年にその基準を一律に定め、
さらに順次、基準の数値を下げている。
2009年には高齢者であっても上の血圧が140、
下の血圧が90以上の人は降圧剤を飲む必要があると、
治療ガイドラインを改定し、今もそれが継承されている。

こうした改定は、一応、高齢者であろうが若者であろうが、
血圧が高いほうが病気のリスクが高まるという研究結果に基づいたものとされている。

【高齢者の血圧の上限は?】

しかし、「改悪だ」という批判も多く、
一部には「たくさん降圧剤を処方するために、
製薬会社と結託して基準を下げたのではないか」と疑う声まである。
現実に、製薬会社が関与した降圧剤の比較研究で
大規模なデータ改ざんが最近明らかになったばかりだ。

それに、高齢者の場合、ある程度血圧が高くても、
健康へのリスクは上昇しないという疫学調査もあちこちで出ている。

代表的なものに、アメリカの大規模かつ
長期的な疫学調査である「フラミンガム研究」がある。
これは、マサチューセッツ州のフラミンガムの住民を対象に、
1948年から60年以上、今も継続しておこなわれているかなり大規模な疫学調査で、
信頼性も高い研究である。

この調査では、高血圧による心血管リスクや死亡率には、
加齢に伴って閾値(いきち)が上昇するという結果が出ている。

65歳から74歳の前期高齢者では、
男性で約160mmHg、女性で約170mmHgを超えた時点で、
心血管リスクや死亡率が高まるのだという。

また、別の調査では、80歳以上では180mmHg以上が閾値だという結果もある。

【「病気モデル」と「健康モデル」】

これらの結果から生じる疑問は、
日本で「下げろ下げろ」と言われているほど血圧を下げなくても、
結局、死亡率には変わりがないのではないか、ということだ。

やはり血圧が高すぎるのは問題があるが、
許容範囲が狭すぎるように感じるのだ。

日本の医療は「病気モデル」であって、
マイナスの部分をなんとか適正値まで引き上げようとする。

性格でたとえるなら、“短所”や“欠点”にばかり目を向けて、
それをどうにか直そうと必死になっているようなものだ。

それで、カロリーを抑えろ、肉は食べすぎるな、酒はやめろ、
タバコもやめろという「がまん」ばかりを強いることになる。

しかし、私は「健康モデル」こそが重要なのではないかと思う。
万能な人間などいないし、年をとれば多かれ少なかれ、
体のどこかに不具合は生じてくるものだ。

【短所より長所に目を向けて】


私はよく言うのだが、“短所”をどうにかしようと頑張るより、
“長所”をいかに伸ばすかを考えたほうが、効率がよく、しかも人生ハッピーだ。

受験勉強でも得意科目で差をつけるような子どものほうが、
苦手科目のない子どもより名門校に合格しやすいし、
プロスポーツの世界でも、短所のない選手より、
多少の短所があっても長所の光っている選手のほうが人気が出る。

仕事も人間関係も性格も、同じことが言える。
人の魅力というのは、そこに存在するのだ。
それなのに、健康にだけはそれが当てはまらないということはない。

実際、検査データがすべて正常のやせ形のよぼよぼした人より、
いくつか検査データに異常があるが、
若々しくいきいきしているお年寄りのほうが、ずっと長生きしている印象がある
(これは疫学的根拠はないが、
私の35年にわたる高齢者臨床の体験から自信を持って言える)。

生命を脅かすような短所は是正するにしても、
そうでないなら、“長所”に目を向けて、
よりよい人生を考えるほうが健全ではないだろうか。

●欠点ばかり見ず、長所にも目を向けるべき


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※本記事は、和田秀樹さんの著書
『50歳の分岐点――差がつく「思秋期」の過ごし方』(大和書房)
の一部を再編集したものです。
元記事はこちら→和田秀樹 高血圧は「病気」ではないのに、薬で下げようとする日本の医者。短所を治すより、長所を伸ばすほうが効率は良い 50歳の分岐点 差がつく「思秋期」の過ごし方|健康|婦人公論.jp (fujinkoron.jp)

和田秀樹さんプロフィール
精神科医
1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学学校国際フェローを経て、現在、ルネクリニック東京院院長。立命館大学生命科学部特任教授。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって、高齢者医療の現場に携わっている。主な著書に『年代別 医学的に正しい生き方』(講談社)、『六十代と七十代 心と体の整え方』(バジリコ)、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社)、『老人入門 - いまさら聞けない必須知識20講 -』『心が老いない生き方 - 年齢呪縛をふりほどけ! -』(共に、ワニブックスPLUS新書)など。