腱鞘炎とは?
腱鞘炎とは「指を酷使した結果、指や手首の腱鞘に起こる炎症」のことです。
指や手首には「腱」があります。この腱は骨と筋肉を繋ぐものです。そして「腱鞘」が指の骨から腱が浮き上がるのを防いでいます。この腱と腱鞘が、指を使いすぎたときにこすれて炎症を起こすことがあり、これが腱鞘炎です。
指の腱鞘炎はパソコンやピアノ、裁縫などで指を使うことが多い人に起こりやすいと言われる症状です。手首の腱鞘炎はホルモンバランスの乱れも関係していると考えられ、妊娠・出産期や更年期の女性にも多く見られます。
また、育児中で赤ちゃんを抱えるお母さんにも多い症状となります。患者さんは比較的女性に多いのですが、パソコンでキーボードやマウスを多く使う男性にも見られます。
まれに、アキレス腱や足に起こることがありますが、圧倒的に手部の発症が多いようです。
腱鞘炎の症状
指や手首といった、生活の中でよく動かす部位に発症しやすく、痛み・腫れ・熱感・引っかかり感・動かしづらさを生じます。
腱鞘炎の原因
感染症や関節リウマチなどが原因のこともありますが、多くの場合、次に挙げた動作を通して、「体の特定の部位を使いすぎる」と発症します。
- タイピング
- スマホ操作
- 手で握る動きの多いスポーツをする
- 手書きの執筆作業
- 弦楽器の演奏
また、妊娠・出産・閉経・更年期といったタイミングで発症することが多いため、「女性ホルモンのバランスが乱れる」ことも、一因と考えられています。
・なぜ特定の部位を使いすぎると、腱や腱鞘(けんしょう)で炎症が起きるのか?
炎症を起こしている腱は、骨と筋肉をつないでいる、ひも状の組織です。
一方で腱鞘(けんしょう)は、腱を包んで骨に固定する役割を持つ組織で、筒のような形をしています。
指や手を自由に動かせるのは、筒形をした腱鞘(けんしょう)の中を、ひも状の腱が滑って移動するからです。
本来は、腱鞘と腱の間に滑液があるため、腱が動いてもこすれることはありません。
しかし、指や手を激しく動かすなどして負荷がかかると、腱と腱鞘(けんしょう)がこすれて、炎症を起こしてしまうのです。
さらに炎症を繰り返すと、しだいに腱は太く、腱鞘の穴は狭くなっていくため、引っかかり感や動かしづらさが生じます。
そのため、痛みを感じたら放置せず、早めに対処することが大切です。
腱鞘炎の主な種類
腱鞘炎にはいくつか種類があり、特によく見られるのが「ばね指」と「ドケルバン病」の2つです。
「ばね指」は指、「ドケルバン病」は手首に、それぞれ症状が現れます。
ばね指(指の腱鞘炎)
- ・特に親指と中指で発症
- ・指の付け根に痛みや腫れ
- ・悪化すると指の曲げ伸ばし時に引っかかり感が出て、やがて動かせなくなる
指の曲げ伸ばしを担う腱(屈筋腱・くっきんけん)とそれを固定する腱鞘(靱帯性腱鞘・じんたいせいけんしょう)で炎症が起こる
ドケルバン病(手首の腱鞘炎)
- ・親指を動かすと手首が痛む
- ・親指側の手首が腫れる
- ・悪化すると手に力が入らなくなる
親指と手首をつなぐ2本の腱(短母指伸筋腱・たんぼししんきんけん、/長母指外転筋腱・ちょうぼしがいてんきんけん)と、それらを固定する腱鞘で炎症が起こる
ちなみに「ばね指」と「ド・ケルバン病」はそれぞれ次の方法でセルフチェックできます。
- ばね指:指に引っかかり感がある
- ド・ケルバン病:手を前に出した状態で親指を手のひら側に倒し、反対の手で小指方向へ引っ張った時に手首の痛みがある(フィンケルシュタインテスト)
腱鞘炎と鍼灸治療について
鍼灸による腱鞘炎の治療では、炎症の起きている箇所やその周辺に、鍼や灸で刺激を与えていきます。
また、手の延長線上にある腕、肩、首、腰などのこりによって、手首などに負担がかかっていることが多いため、必要な場合はこれらの部位にも施術します。
鍼や灸が腱鞘炎の治療に効果的なのは、どちらにも痛みを鎮める効果や血行を良くする効果があるからです。
患部の痛みを鎮めて血行を良くすることで、動きの悪くなった筋肉をほぐし、自然治癒力を高めることができます。
効果の現れ方には個人差がありますが、週1~2回の治療を1~2ヶ月ほど続けると改善が見られるケースが多いようです。
腱鞘炎の予防法
・予防法1:休憩をはさむ
指や手首を使う作業を長時間続ける時は、こまめに休憩をはさみましょう。
また、手を使いすぎた自覚がある時や、疲れがたまってきた時には、そのつど手を休ませることが、腱鞘炎の予防にとって大切なポイントです。
あらかじめ休憩をはさむ間隔を決めておくといいでしょう。
・予防法2:ストレッチをする
作業の前後や休憩中にストレッチをするのもおすすめです。
指や手首の柔軟性を高めることで、腱にかかる負担を減らせる可能性があります。
【指のストレッチ】
①指を手の甲側へ、1本ずつゆっくりと反らしていく
②①を2~3セット繰り返す
※無理に反らそうとはせず、痛みが生じたらすぐに中止してください。
【手首のストレッチ】
①手のひらから肘(ひじ)までの部分を、机の上に置く
②手首を建てて腕の方向へ曲げ、もう片方の手を使って、さらに腕の方へ手指を反らす
③10秒間続けたら、反対の手も同様に①②を行う
※無理に伸ばそうとせず、痛みを感じたらすぐに中止しましょう。
予防法3:患部を冷やす
軽い痛みを感じた時は、患部を冷やすと炎症を抑えられます。
冷湿布や氷水、保冷剤などを使って患部を冷やしましょう。
氷傷にならないようにタオルなどで包んでから当ててください。
腱鞘炎は手指の使い過ぎにより痛めてしまうケースが最も多いです。
そのため、あまり手首や腕に負担を強いらないよう心掛けてお過ごし頂く事が何よりも重要になります。また、安静にされると同時に鍼灸を受けられる事でスムーズな回復を期待する事ができます。
もし、『湿布を貼り続けているけれど改善がみられない』という方は、一度ご相談ください。
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