腰痛はさまざまな要因によって引き起こされますが、
そのひとつにストレスもあげられます。
ストレスは腰痛の発症や、とくに慢性化に影響すると考えられています。
そのメカニズムと改善方法について解説します。
心理的なストレスが腰痛のリスクになる
厚生労働省の「新たな視点に立った腰痛対策」(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/rousai/hojokin/dl/26_14020301-01_02.pdf)では、
腰痛の危険因子として【メカニカルな腰へのストレス】とともに、
【心理的なストレス】もあげられています。(下図)
【ストレスを受けると脳が痛みに弱くなる】
ストレスによって腰痛を起こしたり、悪化させたり、慢性化させたりするということは、多くの研究で報告されています。
その原因として、ストレスが脳の疼痛抑制系に影響を与えることが挙げられます。
脳の疼痛抑制系とは、痛みを和らげる神経回路のことで、ドーパミンやセロトニンなどの神経伝達物質が関与しています。
ドーパミンやセロトニンは「幸せホルモン」ともいわれ、痛みを感じる神経細胞に作用して痛みを和らげたり、幸福感をもたらす働きをします。
しかし、ストレスが脳内に作用すると、疼痛抑制系の働きが低下することがあります。
ストレスによって脳内で放出されるストレスホルモンや炎症性サイトカインが、
ドーパミンやセロトニンの作用を妨ぎ、その分泌量が減ってしまうことが原因です。
そうすると、正常ならば抑えられていた痛みを、強い痛みとして感じてしまいます。
例えば正常であれば10程度の痛みだったものが、疼痛抑制系が弱って痛みをやわらげる
ドーパミンやセロトニンが少ないために50とか60の痛みとして感じてしまう、となってしまうのです。
言ってみればストレスによって脳が痛みに弱くなってしまっている状態。
このようなメカニズムのため、ストレスが継続すると痛みを和らげる力が低下して、
腰痛が悪化したり慢性化してしまったりするのです。
【ストレスは筋緊張をひきおこす】
また、ストレスは筋肉の緊張を引き起こすこともあります。
例えばお化け屋敷に入った時を考えてください。怖くて体がこわばりませんか? これがストレスによる筋緊張のひとつです。
仕事や人間関係、心配事などによるストレスに長くさらされていると、
それによって身体が無意識に緊張しています。
これは全身的におこる反応ですが、
人によって肩に強く感じると首や肩のこりになりますし、腰に強く感じれば腰痛になる場合もあるのです。
さらに、ストレスによって睡眠の質が低下して疲労がたまってしまったり、
疲労がなかなか抜けなくなったりすることもあります。
これも筋肉の緊張の原因となり、それがもとで腰痛を引き起こすことがあります。
このように、ストレスが腰痛を悪化させる原因として、脳の疼痛抑制系の機能低下や、
筋肉の緊張、疲労の増加などが関係するのです。
【ストレスを軽減して腰痛を改善する方法】
ストレスが原因の腰痛を改善するには、ストレスを解消することが重要ですが、
運動も効果的な方法の一つです。例えば次のような運動がおすすめです。
・ウォーキング
ウォーキングは、有酸素運動の代表的なものであり、ストレスを軽減する効果があります。
なるべく荷物などを持たずに楽な格好で歩きましょう。
はじめは20~30分程度のウォーキングを週1~2回から、慣れて来たら40~60分程度のウォーキングを週1~3回程度できると良いでしょう。
・ストレッチ
ストレッチは、緊張した筋肉をゆるめます。
またそれによって血行を良くして自律神経や脳の働きを良くしてくれます。
それによって腰痛の改善に効果が期待できます。具体的な方法は後述します。
・ヨガ
ヨガは、ストレッチと深呼吸を組み合わせた運動で、ストレスを軽減する効果があります。それによって全身の緊張をほぐし、脳の働きを回復してくれます。
・水泳
水泳は、水の浮力を利用して、
腰や関節に負担をかけずに全身の筋肉を使うことができます。
それによってストレスを軽減する効果もあります。泳がなくても、水中ウォーキングなども効果があります。
これらの運動は、ストレスを軽減する効果があり、腰痛を改善する効果も期待できます。
ただし、痛くてこれらの運動ができかったり、運動中にかえって痛みが強くなったりするような場合は、医師や専門家に相談することをおすすめします。
また、運動前に十分なウォームアップを行い、無理な負荷をかけないように注意しましょう。
【腰痛を改善するストレッチ】
筆者の腰痛トレーニング研究所(https://re-studio.jp/)では、
次のようなストレッチをおすすめしています。
・腰のストレッチ
仰向けに寝て片脚を90度持ち上げます。
そこから持ち上げた脚を反対に倒すようにして腰を捻りましょう。
上の図の場合は、左脚を持ち上げてから右に倒すようにしています。
腰からお尻にかけて心地よく伸びたところで止め、30~60秒ほどキープします。
呼吸は楽に続けて、息を止めないようにしましょう。
できる方は、顔を倒した脚と反対側に向けるとよりストレッチがかかります。
身体の力をできるだけ抜きます。とくに伸びている腰やお尻の力を抜くようにしましょう。
力んでしまうと十分に筋肉が伸びません。
終わったらゆっくりと戻し、反対側も同じようにおこないましょう。
痛みのためにこの姿勢ができない、
またはこの姿勢をとると症状が悪化する時はやめてください。
・殿筋のストレッチ
自宅で出来る!腰痛トレーニングより(https://re-studio.jp/dvd/)
仰向けで両膝を立て、片方の足首を反対の膝に乗せます。
そのまま腿の裏を両手で抱えて胸に引き寄せます。
お尻から腿の裏側にかけて心地よく伸びたところで止め、30~60秒ほどキープします。
呼吸は楽に続けて、息を止めないようにしましょう。
身体の力をできるだけ抜きます。とくに伸びている部分の力を抜くようにしましょう。
力んでしまうと十分に筋肉が伸びません。
終わったらゆっくりと戻し、反対側も同じようにおこないましょう。
腿の裏を持つのでは楽な場合は、すねを持つようにしてみましょう。
痛みのためにこの姿勢ができない、
またはこの姿勢をとると症状が悪化する時はやめてください。
【まとめ】
ストレスによって脳の鎮痛機能が低下してしまうと、痛みを感じやすくなったり筋肉の緊張をおこしてしまい、それが腰痛の発症や慢性化の原因になることがあります。
これを改善するにはストレスを解消することや、適度な運動が効果的です。
ウォーキングやストレッチなどをおこなうことで、腰痛を改善することができます。
この記事があなたの腰の痛みを改善する一助になりましたら幸いです。
神戸針灸接骨治療院ではこのような健康になるためのお話なども投稿しています。
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今回は、鍼灸師の川口陽海さんの記事を一部引用させていただきました。
元記事はこちら→ストレスが腰痛や慢性化の原因になる! その改善方法とは?【川口陽海の腰痛改善教室 第111回】 | サライ.jp|小学館の雑誌『サライ』公式サイト (serai.jp)文・指導/川口陽海 厚生労働大臣認定鍼灸師。腰痛トレーニング研究所代表。治療家として20年以上活動、のべ1万人以上を治療。自身が椎間板へルニアと診断され18年以上腰痛坐骨神経痛に苦しんだが、様々な治療、トレーニング、心理療法などを研究し、独自の治療メソッドを確立し完治する。現在新宿区四谷にて腰痛・坐骨神経痛を専門に治療にあたっている。著書に「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい(発行:アスコム)」がある。