人生100年時代、自立した生活を長く送るためには、
要介護状態になるのを避ける、できるだけ遅らせることが重要です。
そのひとつのカギは、立ち上がる時や転倒の防止に必要な「筋力」にあります。
本連載では、年齢を重ねた親と子が一緒に考え、
取り組んでいきたい「シニアの筋トレ」についてお届けしていきます。
4回目は、齢(よわい)を重ねても若々しく生き生きと人生を楽しんでいる人たちの
【健康長寿の秘訣】に迫ります。
* * *
寿命が延びて、いまや100歳以上の高齢者は全国で9万人以上います。
そのため、たとえ何かしらの病気があったとしても、
高齢期を健やかに活動的に過ごし、
元気長寿を達成することが社会的な課題となっています。
世界的に目を向けると、高齢期の生き方のモデルとして
「豊かに老いる」ことを意味する
「サクセスフルエイジング」という言葉が広がっているようです。
【■年をとっても「総合的な健康度」は若く保てる】
健康でいられる期間の長い高齢者の多くは、
元気長寿の高齢者「アクティブシニア」として、
運動やスポーツ活動を含む日常生活を積極的に楽しんでいます。
世の中には、90歳、100歳を超えてもゴルフやボウリング、ウォーキングなど
趣味のスポーツを満喫しながら、活動的な人生を送っているアクティブシニアがいます。
スポーツ医学の第一人者、筑波大学名誉教授の田中喜代次氏の研究結果によれば、
そんな元気な高齢者の場合、
10歳年をとっても、「活力年齢」は2、3歳しか増えないそうです。
「活力年齢」とは、動脈硬化や生活習慣病の促進に関わる、
血圧・中性脂肪・コレステロール・腹囲・
ヘマトクリット(血液中に赤血球が占める割合)・骨強度に加えて、
心肺機能(持久力)・動きの素早さ(敏捷性)・バランス感覚(平衡性)などの
データを元にして算出される、総合的な健康度指標です
(主成分分析による成人女性の活力年齢の推定.体育学研究,田中喜代次ほか、1990)。
第3回で紹介した「体力年齢」は、体力測定結果から算出される指標で、
運動能力が高いほど低くなるものです。
この体力の水準に、
さらに健康度に関わる身体データを合わせて算出されるものが「活力年齢」です。
活力年齢が暦年齢(実際の年齢)よりも10歳程度若い場合、
その人は健康・体力指標のバランスが良い
(血圧や血液検査結果が良好で、体力が標準または高い)ことが示されます。
運動習慣のある人では、活力年齢が暦年齢よりも
12歳ほど若くなるという研究結果も報告されているそうです。
田中教授は、サクセスフルエイジングを発展させて
「健幸華齢(けんこうかれい)」という言葉を提唱しています。
「健幸華齢とは、身体が健康であるだけでなく、
精神面においても生き生きとして『幸せな気持ちで華やかに齢を重ねる』ことを表します。
高齢者の一人ひとりが、食べられる喜び、
仲間とともに運動・スポーツを楽しめる喜びに溢れ、
日々の生活を満喫しながら、積極的に健幸華齢に取り組み、
アクティブに生きてほしいと思います」(田中教授)
では、健幸華齢を達成するためには、どんなことをしたら良いのでしょうか?
【■高齢期の「余生の質」を保持しよう】
お勧めしたいのは、スマートに(賢く、知的に)生きる・老いる、
「スマートライフ」の実践です。
スマートライフには複数の要素がありますが、
それらを通じて高齢期の「ELQ(End of Life Quality: 余生の質)」
を保持することができます。
まず初めは、「スマートエクササイズ」です。
これは各自が日々の楽しみ・
習慣として主体的に取り組んでほしい、一連の「運動」です。
食事の献立を主食+主菜+副菜(1)+副菜(2)で組み立てるのと同様に、
週当たりのエクササイズも自分の目的、好み、体調、ライフスタイルなどに合わせて、
以下の「コーディネーション系」「レジスタンス系」「ストレッチ系」「有酸素系」
の四つのカテゴリーのエクササイズから
種類と量をバランス良く選んで組み合わせていきましょう。
【4つのスマートエクササイズ】
<1>コーディネーション系:
これは動きの巧みさ、バランス感覚などを保持・向上させる運動です。
回数に制限はありません。
ヨガや太極拳、ラジオ体操、ダンス、卓球などがお勧めです。
日常生活では、料理や楽器演奏、囲碁・将棋などが含まれます。
<2>レジスタンス系:
筋肉、筋持久力の保持・強化につながる運動です。
少しきついと感じる程度の強度で、1セット8~12回を2~4セット、
週2~3日程度おこないましょう。
スクワットなどの自体重をかけた筋肉トレーニングやダンベル体操、
マシントレーニング、ボールエクササイズなどが良いでしょう。
日常生活でも、布団干しや階段昇降、イスの立ち座りなどをおこなうと良いですね。
<3>ストレッチ系:
柔軟性や関節可動域を保持・向上させる運動です。
「心地良い張り」を感じる程度の強度で、反動をつけずにゆっくりとおこないましょう。
筋群あたり1回15~60秒、全身で10分程度、毎日おこないます。
ストレッチ運動、深呼吸、マッサージなどがこれに含まれます。
日常動作では、身体拭きや靴下履きなどの動作が相当します。
<4>有酸素系:
これは全身持久力を保持・向上させることができる運動です。
ウォーキング、ジョギング、エアロビクス、自転車こぎなどがあります。
「ややきつい」と感じる程度の強度で、
1回10分以上、1日合計30分以上、週5日以上行うと良いでしょう。
日常生活では、散歩や買い物、旅行など、歩く動作の運動です。
以上のような「スマートエクササイズ」による運動の習慣化は、
総合体力の維持、向上に役立つのみならず、
精神面で「身体が動く喜び」「動ける幸せ」が感じられ、
脳神経系の認知機能にも良い影響を与えます。
そして、運動と同じくらい重要なのが「栄養」です。
食が細くなり、消化吸収力が低下しやすい高齢期に陥りがちな
「低栄養状態」を防止するために、「スマートダイエット」を実践しましょう。
糖質と脂質を控えめにすることを原則としながら、
栄養バランスの取れた食事法です。
乳製品、卵、肉、魚、大豆製品、野菜、海藻類、
キノコ類、果物、米穀類、油脂、砂糖など、
いろいろな素材をバランス良く取ることを心がけましょう。
標準的な日本食や地中海食のメニューを取り入れるのがおすすめです。
地中海食は、食物繊維やビタミンが豊富な野菜、
ナッツや果物、全粒粉など未精製の穀類、
乳製品、魚介類をバランス良く取ることができる食事です。
低飽和脂肪酸のオリーブオイルをほぼ毎日摂取し、
肉類を控えて魚介類を多く摂取することで、
健康寿命の延伸に効果があるといわれます。
【■主治医に相談して、定期的に飲んでいる薬を見直す】
そのほか、高齢者の場合、
普段自身が飲んでいる薬による影響を考えた「スマート服薬」を意識することも大切です。
例えば糖尿病の薬の副作用で低血糖になり転倒・昏睡を起こしたり、
睡眠薬の副作用により認知機能の低下を
きたしたりすることがないように気をつけましょう。
自己判断で服薬を中止することは危険ですので、
飲んでいる薬の定期的な見直しを、年齢や体格、筋肉量を考慮しながら、
主治医に相談すると良いでしょう。
さらに、認知機能を賦活させるために、
「スマート脳トレ」も組み合わせると良いでしょう。
教養を問うようなクイズを解くのではなく、
記憶・学習・感情など脳のさまざまな機能を賦活(活性化)させることが大切です。
楽しみながら頭(脳)を日常生活の中で積極的に働かせて、
知的活動を促進しましょう。
健幸華齢を実現するには、
(1)運動・フィットネス、(2)食事・栄養、(3)服薬管理と、
精神的な強さである(4)メンタルタフネスの4大要素が重要になります。
加齢に伴って起きる生理的老化現象を素直に受け入れ、
不必要に思い悩まず、気丈に生き延びるメンタル力を身につけましょう。
特別なことを実践するのではなく、
日々の生活の過ごし方がうまくなることで健康力が高まります。
アクティブシニアになるための初めの一歩として、
スマートライフを継続して送れるように、
まず心のスイッチを入れることから始めていきましょう。
神戸針灸接骨治療院ではこのような健康になるためのお話なども投稿しています。
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今回は、取材・文/坂井由美さんが、
筑波大学名誉教授 田中喜代次先生にお伺いした記事から
引用させていただきました。
元記事はこちら→10年で2、3歳しか老けない高齢者は何が違うの? 老年科学者がすすめる「健幸華齢(けんこうかれい)」とは(1/3)〈dot.〉 | AERA dot. (アエラドット) (asahi.com)